門刈(もんがり)
私が葬祭業に就いた1987年には、病院死亡、自宅安置が多く、自宅には「×」木製の印を屋敷の端端に着けたものです。葬儀屋の目印だと揶揄されたものです。調べたら「殯(もがり)」という習俗の名残だと推定しました。「殯(もがり)」は、日本や中国などで使われてきた古い言葉で、亡くなった人をすぐに埋葬せず、一定期間安置して弔う儀式やその期間のことを指します。古代日本では、遺体を仮の場所(殯宮など)に安置し、親族や人々が弔いの儀式を行いました。これは遺体の腐敗防止や埋葬の準備だけでなく、「魂がまだ近くにいる」と考えられていた宗教的な意味合いもありました。天皇や皇族の場合は特に長い殯の期間を設け、政治的・儀礼的な行事も行われました。今の葬儀・告別式は基本的に数日で行われますが、殯は数週間〜数か月以上続く場合もありました。現代日本ではほぼ廃れていますが、「もがり」という言葉は古典文学や歴史書に残っています。本来の趣旨は違いますが、エンバーミングにも繋がっている要素もあると私は思っております。(リンクモア社長 船橋)

